"MAX MOVIE MAGAZINE 2月号(2016)" ギョンス インタビュー訳


     初めて彼に会った日

すでに完成されて熟練していると思っていた。下手な予想は見事に外れた。ド・ギョンスは時間が経つにつれじっくりと溶け自然に知ることになるそんな"人物"だった。
撮影現場に入ってきたときの逞しい挨拶と少しぎこちなかった姿から、撮影が始まると慣れたポーズとたまに放つ冗談で現場の雰囲気にたちまち溶け込む姿、向かい合って座り投げかける質問ひとつにも慎重に考えて答える姿まで、どれも人為的に作られたものではなく生まれ持った自然さが滲み出ていた。「ド・ギョンスという人物のナチュラルさが最も重要だ」と話す彼はインタビューで自分を隠さず全て見せてくれた。彼と作品を共にした先輩俳優たちが声を揃えて彼を称賛する理由が分かった気がした。(<カート>で彼の母親役を演じたヨム・ジョンアは『私の息子もド・ギョンスのように育ってくれたら嬉しい』と話していた。)
何よりも、質問ひとつひとつにギュッと詰め込んだ思いを話す眼差しからは焦りや恐れが見られなかったということが印象的だった。彼は"自然な余裕"というものすごい武器を持っているのかもしれない。






_最近すごく忙しいのでは?俳優と歌手のバランスをとるのは簡単なことではないでしょう。

ギョンス:二兎追うこと自体が難しい。あえて二つのバランスを保とうとはしない。ある意味EXOのディオもキャラクターだと考える。ドギョンスという人物は歌手としてディオを演じ、俳優として作品のキャラクターを演じていると思っている。



_もともと認知度も高く多くの人気を誇っているため商業的な作品や比重の多いキャラクターに重点を置くのかと思った。だが規模や素材にこだわりは無さそうで特別出演までしているのをみると意外だと思った。

ギョンス:自分が気に入ったキャラクターならどんなものだろうと関係ない。まずはシナリオを見てその人物に嵌らなければならない。即座に自分とマッチできなくても、自分の中に潜在しているものがその役柄にどう作用されるのかを考える。この人物を演じてみたいと思えばすぐに応じる方だ。



_<カート>のテヨンもそうだが<君を憶えてる>のジュニョン、<大丈夫、愛だ>のガンウなど今まで演じてきたキャラクターには現代社会の問題が込められていて、悲しみやそれぞれの事情などがあった。ド・ギョンスとは全く共通点の無いキャラクターだと思うが?

ギョンス:今は何かを作り上げていく事よりも、自分の中にある姿をオーディエンスに見せようとしているところだ。もちろんキャラクターのために作っている部分もあるが最大限ドギョンスとキャラクターの中間接点を作ろうと努力している。ガンウもテヨンも僕の中にある暗い一面と重なる部分があったと思う。むしろ<純情>のボムシル役がかなり難しかった。



_意外だ。

ギョンス:僕は今24歳だがボムシルは17歳だ。青少年期の明るさと純粋さを表現しなければいけないのが難しかった。もともと昔の思い出などをきちんと憶えておくことができない。だから17歳のときどんな感じだったのか、あのとき経験した初恋がどうだったのかを思い返す必要があった。当時の感情をたどり思い浮かべながらボムシルを演じたが、不安で気がかりでもある。果たしてボムシルの振る舞いや話す姿が本当の17歳として観客に見てもらえるのか(笑)



_ルックスは十分17歳に見える。童顔からくる悩みもあるのだろうか?

ギョンス:可愛さを求められる事。そういうのは本当に苦手なのに。



_男らしいタイプなのか?さっきの撮影で悪い男のコンセプトに恥ずかしがってたけど?

ギョンス:うーん、"男らしい"ということが何なのかよく分からない。寡黙であることが男らしいのか、タフであるのが男らしいのか。男らしい姿を見せてくれと言われてもまだ感覚が掴めない。徐々に男らしさを見つけようと努力しているところだ(笑)



_演技をするとき大げさに感情表現はしない。にもかかわらず君の眼差しと演技からは特別な共感とヒューマニズムが感じられる。

ギョンス:おぉ、きちんと見てくださっている!それが僕だ。僕は人生で一度も感情を爆発させた経験がない。心の中では爆発していても外からは見えないのだ。ひたすら心の中で抑えるタイプだ。



_ということはストレスを受けないタイプ?

ギョンス:たくさんストレスを受けても少しすれば忘れてしまう。無意識のうちにストレスを受けては解消しているらしい。たまに、演技をするときその無意識の中で残っている部分が思わず出てしまうこともあるが(笑)



_<カート>でテヨンがお母さんの前で声を荒げるシーンが最も爆発していたと思う。

ギョンス:その通りだ。とりあえずやってみたのだが生まれてこの方あんなに声を荒げたことがないから大変だった。



_お母さんに3回もビンタされて感情移入したんじゃないの?

ギョンス:助けになったのは間違いない(笑)ヨム・ジョンア先輩は容赦なかった。ハハハッ



_キム・ヒウォンさんにもかなり叩かれてなかった?

ギョンス:今までひたすら殴られる側で殴ったことはない。キム・ヒウォン先輩がものすごく配慮してくれた。殴られる人より殴る人のほうが大変だということをその時に感じた。殴ってみたくもある。どんな感じなのか知りたいから。



_作品を通して新しい経験を楽しむタイプなようだ。

ギョンス:作品を作りながら知る、自分さえ知らなかった感情があるんだ。もともと僕の感情には"グッとくる(泣きそう)"という感情は無かった。悲しい映画をみてもあまり泣かないし。でも<大丈夫、愛だ>の撮影を終えて打ち上げの時、ノ・ヒギョン脚本家がいらっしゃって挨拶をしているときにグッとくる感情が突然自分の中に自然と湧きあがったんだ。「あぁ、これがグッとくる感情なんだな」と実感した。それ以降、演技をするときは上手く泣ける。



_他の作品で知った感情はある?

ギョンス:<純情>でひとつあった。お父さんに怒りを表すシーンで、本当に怒りが爆発したかのようにある瞬間から眩暈がした。冗談ではなく3回目だったか4回目のテイクで突然身体が固まった。瞳孔が開き口も固まり全身動かせなくなって自分でも驚いて、イ・ウニ監督に体がおかしいと伝えた。スタッフたちが10分程身体をほぐしてくれて治ったが、そのときは怒りではなく狂気の感情だったと思う。こういったことを一つずつ知るたびに快感を感じる。



_狂気といえば<君を憶えてる>のジュニョンでしょう!

ギョンス:ハハッ、そうだね。もっと狂気を発散する役柄も演じてみたい。(スマホの待ち受け画面を見せながら)<ダークナイト>のヒース・レジャーのジョーカーみたいな!あとノワールもしてみたいし、ファンタジー系もしてみたいし。今は全てに欲が出る。



_これまで長いキャリアを積んだ先輩たちと演技をする作品がほとんどだった。

ギョンス:<純情>が初主演作品であると同時に、唯一同年代の俳優たちと演技をすることができた作品でもあるわけだ。初の主演作という重みを映画撮影当時は知らなかった。撮影を終えてチョ・ジョンソクさんと出演する<兄>を撮りながら知ったのだ。<純情>に出演する5人の中では僕が長男だ。だから4人の俳優たちと作品に対する話をたくさんした。僕たちが本当に親しくなってこそスクリーンで自然な姿が滲み出ると思った。5人全員が仲良くなろうという気持ちから、釣りをしたり一緒に海へ泳ぎに行ったり仲良くなろうと努めた。



_俳優としてカメラの前に初めて立った時のことを覚えてる?

ギョンス:<カート>の初撮影と<大丈夫、愛だ>の初撮影は違った。<カート>では幼い子と学校で撮影したからなのか「わぁ、こうやって映るのか。楽しいな。」と思った。でも<大丈夫、愛だ>では初撮影のとき「だめだ、オワッタな」と思った。



_<大丈夫、愛だ>の初撮影はどのシーンだった?

ギョンス:「先生、それ僕が書いた小説です。必ず読んでくださいね!」と言ってダダダッと走り去るシーン。自分で見ても不自然で緊張しているのが歴然だった。チョ・インソンさんと一緒の現場だから余計に緊張したのだろう。二回目の撮影はトイレでインソンさんと用を足すシーンだったんだけど、そのときも緊張しすぎてめちゃくちゃ汗をかいた(笑)



_ちょっと違う話題に移ろう。24歳の青年、今のド・ギョンスはどう?

ギョンス:あまりにも早く社会生活をしたからか周りの人に若年寄りみたいだとよく言われる。悟った分だけ大変だということを最近になってよく実感する。もちろん僕の助けになることの方が多いけど。自分の年齢にあった感情を感じたくもある。それでも全体的に見れば自分らしく上手いことやっていってる気もする。最大限そうであろうと努力もするし。



_演技や仕事を除いて楽しいことは?

ギョンス:今はない。現実的に考えて時間が無いから。誰かとお喋りしているとき!このときは心がラクになって楽しい。会話をしながら怒り、悲しみ、喜びを感じることができる。こういった感情全てを感じられるというのが良い。



_どんな俳優になりたい?

ギョンス:どんな俳優よりも格好いい人になりたい。この前<レヴェナント:蘇えりし者>を観たんだけど、映画のなかのレオナルド・ディカプリオをみながらただひたすら格好いいということしか浮かばなかった。その"格好いい"は抽象的でもあるけど。誰がみても格好いいと思うような人になりたい。なれるのかは分からないけどそれが僕の目標だ。



_今年決まっている次回作だけでも多い。

ギョンス:まず<純情>が公開されて、次に<兄>だ。多分この二つの作品で完全に違う姿をお見せできると思うから僕も楽しみだ。



_このまえ出た記事では声優もしたらしいが?

ギョンス:あ、<アンダードッグ>!<庭を出ためんどり>を演出したオ・ソンユン監督の新しいアニメである。さすらいの捨て犬グループのムンチ役で、犬の鳴き声の演技をする(笑)この前一度収録をした。僕が演技している表情を全部撮って、それに合わせて連想しながら絵を描いていく方式だというから不思議だった。



_ということは絵コンテが無い状態だったということ?

ギョンス:全部文字だった。大体のスケッチだけ見たけど良い感じだった。なによりもその犬が僕と似ていたんだ。



_ルックスが?

ギョンス:ちょっとまってね。(スマホから画像を探しムンチの写真を見せながら)本当に似てない?



_なんとなく似てるね(笑)なおさら楽しみだ。

ギョンス:普段演技をするときは俳優の顔だけど声だけで演技をするというのはまた違う次元だった。テクニック的に演じるということをたくさん学んだ。



_2016年がスタートしたが一番最初に思い浮かぶ単語を3つ。

ギョンス:礼儀。ナチュラルさ。健康。



_ナチュラルさとは?

ギョンス:自分。ドギョンスという人物のナチュラルさ。わざと作り上げたり人為的じゃないそんなナチュラルさのこと。



     恐れを知らないドギョンス

言葉と振る舞いが一致する確率はどのくらいだろうか。高くない確率にド・ギョンスがいるということは明らかだ。ド・ギョンスは礼儀正しく自然でありながら健康な考えをもつ少年だ。





〔 訳:xiu0348

-宇宙からやって来たひとたちのお言葉記録-

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